読書が楽しくなる秘訣と期待できる効果効能
「読書の魅力を伝えたい」
そんな志を持つくらいなのだから、さぞこの人は読書が好きで、ずっと読書をしてきたのだろう、と思う方もいるかもしれませんが、前回も書いたとおり僕にとって読書は元々趣味ではありません。
最近読むようになったのです。
母は読書が趣味でしたが、そんな家庭に生まれながらにして子供の頃は全くと言っていいほど本を読まなかったし、大人になってからだって月に1冊読むか読まないか、という状態だったのが正直なところです。
そんな状態でもどこかで「きっと読書はした方がいいんだろうなー」という漠然とした気持ちだけはあったものでしたから、図書館で本を借りてきたりもしました。
一念発起とでも言いましょうか、自分にムチ打つ気持ちで、(貸し出し期限があるにもかかわらず)一気に3冊とか4冊借りてみたりしたこともありましたが、結局1冊も読み切らず、そのままそっくり返したことも多々あります。
「読みたい」という気持ちがあるはずなのに、何故だか「読まない」。
あるいは「読めていない」。
そんな人って結構いるのかもしれませんね。
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どうしてそんなことになってしまうのか。
いくつか理由はあると思うのですが、僕が最近強く感じていることに
「読書には技術が必要である」
というものがあります。
正確には技術というより「知識」なのですが、ここではあえて「技術」という言葉を使いたいと思います。
というのも、読書ってまるで “楽器の練習をするようなもの” だと思ったからです。
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当たり前ですが楽器って(一部の天才を除いては)誰でも最初は弾けないものだと思います。
そして弾けないと普通つまらないんです。
だけれども、基礎から学んで、毎日練習して、技術を伸ばしていけば、弾ける曲がどんどん増えていって、どんどん楽しくなります。
これと読書は構図が実は一緒で、読書にも技術が必要だと思うのです。
わかりやすいところで言えば、まず「漢字」。
小難しい話をする本であればあるほど、使われる漢字も難しい傾向にあると思うのですが、読めない漢字が出てきたりするといちいち読むのにつっかかります。
そうすると読むのがつまらなくなって、読書が億劫になり、投げ出しがちになるわけです。
これは楽器で言うところの、曲の途中に出てくる難しいフレーズと考えてもらえばいいでしょう。
かえるの合唱をドレミファミレド~と弾くのに技術は必要ないけれど、例えばショパンの曲を弾くとなったら当然技術が必要になります。
つまり、練習が必要になるわけです。
でもそのたゆまぬ練習をすることによって、確かな技術が身に付き、よどみなくショパンの曲を弾くことができるようになったあかつきには、至極の達成感が待っている。
そしてその過程で身に付けられた技術をもってして、他の曲にも十分に対応できるようになる。
そんな風に地力を育てるのが、技術というものだと思います。
読書だって、読めない漢字が多ければ多いほど億劫なものになるし、読める漢字が多ければ多いほど(それは技術となり)初見で読破できるようになるわけです。
漢字だけに限らず、言葉の意味にしてみてもそうでしょう。
漢字は知ってるし、よく文章に出てくる表現だけれど、意味はよくわからない、という言葉が誰にでも一つや二つあると思うのですが、そういうものも理解していくと、より一層読書は楽しくなります。
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だから僕から言いたいことは、読書は楽器のように後天的に趣味にできるものだし、読めば読むほど指数関数的に楽しくなっていくものだから、最初はつまらなく感じても少し粘ってみてほしいと思います。
いくつかの本を、ある程度の時間を掛けて読むことができたならば、きっとどこかのタイミングで読書の効果効能を実感するはずです。
例えば僕なんかは、読書を通して言葉を知り、漫画をより深く読めるようになったなーと丁度感じているところでした。
それはアニメとか映画とかにも同じことが言えるでしょうし、歌の歌詞に対する理解もそうでしょう。
街に繰り出た時に見掛ける小難しい文章なんかも読めるようになったりします。
例えば旅先で歴史的建造物を見に行けば、大抵それにまつわる説明文があると思いますが、大体そういうのって難しい文字が並んでいると思います。
そういう文章も細かく読み取れるようになると、その目の前にある歴史的建造物に対してより愛着だとかロマンみたいなものを感じることができるようになるのではないでしょうか。
人と話せば表現の幅の広がりを実感し、より自分の考えていることや気持ちを正確に伝えられるようになったりもする。
そうすると誤解も少なくなり、お互いの関係がより確かなものになる。
こんな風に、読書に期待することとして一番に挙げられるのは「知識を得る」ということだと思うのですが、それはもちろんとして、他にももっといろいろあるのです。
僕達人間は言葉を話し、言葉を理解し、言葉を読み、また、言葉で考えます。
その言葉に深い理解があればあるほど、人間としての深みもまた出てくる。
こんなにも人生を豊かにしてくれる趣味って、読書の他にないのではないでしょうか。
おしまい