指を挟んで長い夢を見ました

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3日前のことでした。

 

宮城県には『らーめん堂 仙台っ子』というらーめん屋さんがあります。

「仙台っ子らーめん」なんて呼ばれて愛されて、宮城県仙台市内・周辺に住むものであれば誰でも一度は食べたことがあるだろうし、誰でもその味に魅了されていることと思います(主観入ってます)。

僕と僕のお嫁さんもその例外ではなく、時折急に食べたくなる。

それが3日前の出来事です。

 

二人で車をぶいぶい言わせて向かうと、駐車場は今日もいっぱいです。

決して広いとは言えない駐車スペースに、華麗な運転でスムーズに車を止めると、僕はすぐにでも店内に入ろうと颯爽と飛び出し、勢いよく車のドアを閉めました。

 

そのときです。

僕は左手の小指をドアに挟んでしまいました。

 

かつてないほどの痛みに思わず悲鳴を上げましたが、下手こいた自分にやたらと腹が立ちました。

いつも乗り降りしてるのに、なんで指挟むの?

仙台っ子らーめんは目の前だというのに。

いや、仙台っ子らーめんを目の前にしたからこそか?

人って時にアホだ、と思います。

 

でもその腹立ちがどうでもよくなるくらいの鈍痛が続き、これはもしかしたら折れているかもしれないと思いました。

そんな痛みに悶えている僕を見て、お嫁さんは車の救急箱を準備して、診てあげるからとにかく車に乗るようにと促します。

 

僕は「いやいやこれくらいへっちゃらさ!そんなことより、さあ!期待の仙台っ子らーめんを食べようではないか!」くらいに余裕を見せようと思ったのですが、それもどうやら難しいようです。

少しばかり葛藤したのち、促されるままに車に乗りました。

 

痛い、痛いと年甲斐もなく悶えます。

 

そしたら痛みだけでなく、なんだか具合が悪くなってきて、瞬間「あ、具合が悪くなってきたかららーめんは食べない方がいいかもしれないな」とのん気に思います。

 

でもそんなことを考えてる間に、具合が悪いだけでなく、今度は視界がどんどん白んできて、ただならぬ様子が感じられました。

身に降りかかる違和感に思わず声を出します。

「あれ?なんか変な感じしてきた」

 

意識が遠のくような今までにない経験に

 

僕自身不安を覚えましたが

 

 

程なくして僕は

 

 

 

気を失ったようで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッとします。

「あれ?眠ってた?」

 

彼女は不安げに答えます。

「うん、眠ってた」

 

いわく、僕はあーだのうーだの声を出しながら痙攣していたようで、彼女は119番に手を掛けているところでした。

ずいぶん不安にさせてしまったことでしょう。

 

そのあともしばらく意識が朦朧として、とにかく横になっていました。

 

気を失っているのはほんの数秒程度だったらしいのですが、僕は長い夢を見ているようでした。

短かったはずなのに長く感じられるのはなんだか『インセプション』みたいだな、と朦朧としながら僕は思いました。

 

今度は聴覚に違和感を覚えました。

サーともザーとも言えるような、雨でも降ってるような音が聞こえてきて、これ多分『はじめの一歩』の宮田君が言ってたやつだ、と朦朧としながら僕は思いました(でも多分違う)。

 

そんなような状態で、もしかしたら死ぬということもあるのかな、ということも少しだけ過ぎります。

大丈夫そうで大丈夫ではなかったという塩沢兼人さんの事例が思い出されたのです。

そしたらこれが最後の言葉になるかもしれない、何か言っておいた方がいいかな、とも思いました。

 

でも小指を車のドアに挟んで人が死んだなんていう珍妙な話は聞いたことがないし、大丈夫だろうと思い直します。

もとより声を上手く発せられない。

 

それからしばらく安静にしていたら、徐々に回復してきました。

ほら、大丈夫だろうと言ったでしょう(死ぬかと思った)。

 

……………

調べてみると、恐らく僕が経験したものは「血管迷走神経反射性失神」と言われるもので、

強い痛みや精神的ショック、ストレスが誘因となって自律神経のバランスがくずれ、抹消血管の抵抗が減少し血液が心臓に戻らなくなり、血圧低下となり脳血流が低下して意識がなくなります。

鶴巻温泉病院HPより

とのことでした。

たかだか小指を挟んだくらいで大袈裟なもので、人体とは不思議なものだなと思いました。

 

ただ、例えば僕がやせ我慢をして「へーきへーき」と仙台っ子らーめんの店内に向かったとしましょう。

そしたらもしかしたら、向かう途中とか、あるいは店内で気を失った可能性もあったと思うのです。

そしたら多分、救急車が呼ばれるような事態にまで発展していたのではないでしょうか。

途中で倒れたらどこかに頭をぶつけたかもしれないし、店内で気を失ったらお店としては救急車を呼ばずにはいられないと思うから、そんなことになったらいよいよ大事です。

「人体って不思議だな」では済まされない。

 

そして、実際一人だったら多分そうなっていたと思います。

止める者がいなければ、僕の性格上「いってー」とか言いながら、普通にお店に向かっていたと思うのです。

だから今回はお嫁さんが隣にいて本当に良かったなと思いました。

いい勉強になりました。

 

痛んだら、様子を見ること。

いいね?

 

ちなみに、そのときは大事をとって仙台っ子らーめんは泣く泣く諦めたのですが、それからすっかり良くなったので出直してちゃんともりもり食べました。

美味しかったです。

 

今度は指も挟みませんでした。

ちゃんと学べて僕は偉いなと思います。

 

へへっ。

 

おしまい