将来の夢は「お父さん」
僕は一般的に言われる「将来の夢」というものを明確に持ったことがありません。
「こんな仕事をしたい」「あんな職業に就きたい」というようなイメージです。
子供の頃からも、大人になった今もそれは一緒です。
だから、自分のやりたいことを見付けてそれに向けて日々頑張っている人を見ると羨ましく思うし、自分にもきっとそういう何かがあるんじゃないかと、見付けられていないだけなんじゃないかと、夢を持っていない自分に焦りを感じることもありました。
だけれども、そんな僕だけれども、一つだけ不思議と自然と持っている自分の未来像がありました。
どんな未来像かと言うと、「自分がお父さんとして子育てをしている」姿です。
そういう感覚はきっと大なり小なりほとんどの人が持っているイメージだとは思いますが、大人になるにつれて、いろいろな人とお話しをしていると、自分は人一倍明確にそのイメージが強いんだなということがわかってきました。
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いつからそのイメージを抱き始めたのかはわからないけれど、少なくとも高校生の時にはそのイメージを持っていました。
例えば映画を観たりしたら自然と「これは子供に見せられる、見せられない」を判断していたし、ゲームをすれば自然と「こういうゲームをいつか子供とやりたいな」ということを思い描いてました。
自分の好きな物を同じように与えてあげたいとか、これは悪影響だから触れさせないようにしようとか、そういうことを当たり前のように考えていたわけです。
街に繰り出れば、実際に子育てしてる人をよく観察していたし、駄々をこねる子供に悪戦苦闘してる親御さんを見れば「ああいうときどう対応したらいいんだろうか」などということを、自分と重ねてイメトレしていました。
それは今でも変わりません。
こういうことをしてあげたい、ああいうこともしてあげたい。
こういうことはやめてほしい、ああいうこともやめてほしい。
そうして出た答えが正しいかは今はまだわからないけれど、とにかくまだ見ぬ子供のことを考えるのが僕にとっては当たり前のことだったのです(しかも高校生のときから)。
そういう本も読むし、そういう話も好きだし、人様の子供の成長記録みたいなのも好きです。
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そうすると、自分なりに「こういう子育てをしたい」というような教育論を考え始めるわけですが、ある日それを兄に話したことがありました。
そうしたらこんな風に言われたのです。
「凄いな、そんな子供中心の生き方おれにはできないわ」
皮肉、ではなかったと思います。
僕としては「子供中心」という感覚は全然ないんだけれども、兄にはそう聞こえるくらい子供に寄り添った子育て論だったようです。
後輩にも話の流れで似たような話をしたことがありました。
そうしたらこんな風に言われたのです。
「なるほど、まっしーさんはそういう野望を持って生きてるんですね」
皮肉、ではなかったと思います。
いずれにせよ言えることは、ほとんどの人が当たり前のように持ってる感覚ではないことを僕が論じたものだから、後輩はそれを「野望」という風に表現したんだと解釈しています。
そして、その時に僕は初めて気が付いたのでした。
「あれ?もしかして自分の夢って子育て?」
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「夢」というと、どうしても職業の話になりがちだと思います。
どんな仕事をして、どんな風に暮らしたいか。
そういうことを考えさせるのが、大人が子供に問い掛ける「夢」の一般的な定義だと思います。
まあ女の子なんかは「お嫁さん」とか言ったりもするとは思いますが、男の子で将来の夢が「旦那さん」なんて言う子はまずいないでしょう。
少なくとも僕は見たことがありません。
僕だって当時「子育て」なんてキーワードは頭の片隅にもなかったし、「夢=仕事」という風に思い込んでいました。
でも本当に純粋に「将来やりたいこと」という意味で言えば、夢が「子育て」であってもなんら不思議ではないと思うのです。
別に仕事をすることだけが将来の夢ではないと思うのです。
そんな風に思えたとき、僕は生まれて初めて自分の「将来の夢」というものの片鱗を見たように思いました。
そう、まだ確定ではない。
実際に子供を目の前にしてはいないから。
でもどうせ夢を持たない僕は、かねてから持っている自分のこの感覚を信じることにしたのです。
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そんなような思いを抱きながら、昨日、婚姻届を出してきました。
奥さんにはすでにその思いは伝えてあるので、僕の人生はここからまた一つ大きな変化を見せるのかもしれません。
このブログでは、その変化の記録とも言えるようなものを書いていけたらなと思っています。
記録とか、考えとか、思いとか。
もちろん実際に子供を授かれるかはわからないけれども、今からそれを考えても仕方がないですから、ひとまずは前向きに取り組んでみようと思います。
でももし子供が生まれたならば、そこから僕の夢がスタートしたと言えるのかな。
それまでにできることはできるだけやっておきたいな。
おしまい