犬も猫も飼ってみて感じた両者の違い(個体差があります)
猫って面白いんですよ。
僕が飼っていた犬はですね、僕の体を傷付けないように、大変に気を使ってくれました。
もしかしたら子供ながらに僕がビビらせていた可能性があることは反省すべき点なんですが、とにかく、僕には噛み付きもしないし引っ掻きもしません。
例えば僕が厚手の手袋をしていると、彼はここは一つ手袋で遊んでやろうと、僕の手袋を奪おうとしてきます。
でも内側に僕の手があることを彼は重々承知しているので、あごをガチガチ震えさせながら、なんとか手袋だけを奪おうとします。
僕の手に噛み付いてしまっては大変だと、ちゃんと思ってくれているわけです。
その健気な姿を見て、僕はまた幸せな気持ちになります。
こんな例もあります。
僕達が興奮して遊び合っているとき、ときたま勢い余って彼の牙ないしは爪が僕の体に触れることがありました。
別に傷付くほどの事故ではないのですが、僕が反射的に「いたっ!」と言うと、彼はいつも遊びを中断し、僕に反省の意を示してきました。
つぶらな瞳で「大丈夫?」という風を装ってきます。
いや、装いでなく本気の反省かもしれませんが、いずれにせよその姿はやっぱり愛くるしい。
……………
それが一転、猫というのはどうしたものか。
僕の体がどうなろうが知ったこっちゃないようで、噛み付くし、引っ掻きます。
もちろん、ある時急に噛み付くとかっていう凶暴性はないのですが、例えばおもちゃで遊んでいたりすると、僕の体のことはお構いなしに爪を思いっきり立てておもちゃを取りに来たりします。
そうすると、場合によっては血が流れるほどの傷を負います。
僕は最初、犬を飼っている感覚が抜けていなかったので、さぞ彼は反省してくれるだろうと思っていました。
わざとらしく「いたっ!」と反応したこともあるし、傷を見せたり、血が流れている痛々しい様を見せ付けてやったりもしたものです。
でも我関せずとした彼の顔を見て、ある時悟りました。
ああ、猫にはわからないのか。
と。
当たり前ですが、やっぱり犬とは違うんだな、と最初に強く感じた出来事でした。
……………
他にも観察していて気付いたことがあります。
猫って、見え隠れする獲物を捕まえる遊びが好きなんだな、と。
というのも、犬って引っ張り合うことが好きです。
おもちゃを噛み噛みすることも好きそうですが、それよりもおもちゃに噛み付いて飼い主とおもちゃを引っ張り合うことに楽しみを覚えている印象を僕は持っています。
つまり、「ゲットしたい」んじゃなくて「バトルしたい」、そんな印象です。
でも猫って、目的としては「ゲットしたい」なんだけれど、丸見えのおもちゃにはあんまり興味を示しません。
ポツンとおもちゃが置かれているだけでは反応を示さないのです。
だけれども、死角になるところで見え隠れするようなおもちゃには、途端に反応するようになります。
なるほどな、猫の習性だな、なんて思ってなおも観察を続けていると、自演をすることにも気が付きました。
例えば、確かにポツンと置かれたおもちゃには反応を示さないけれど、自分が立ち位置を変えれば、そのポツンと置かれたおもちゃが見え隠れするポジションが取れることに気付いたりします。
そうすると、わざわざおもちゃが見えにくいところに移動して、自分で「逃げる獲物」を演出するわけです。
他にも、取りにくいところに自分でおもちゃをぶん投げたりもします。
棚の下とか、冷蔵庫の下とか。
そうやってこれまた「逃げる獲物」を演出するわけですね。
後はまあよく言われる「机の上から物を落とす」とかですね。
よく「飼い主の興味を引くために」とかって説明される行為だと思いますが、僕の印象はただそれで遊びを演出したいだけのように感じています。
つまり、おもちゃ(獲物)をゲットしたいはゲットしたいんだけれど、ゲットする過程を楽しみたい生き物なんだな、ということがよくわかりました。
そういう点も犬と違うところですね。
……………
ただまあ動物にも個体差があると思うので、一概には言えないとは思いますが、少なくとも僕が飼った犬と猫を比べたらそんな違いがありました。
最初はその違いに慣れなくてやきもきしてたんですが、受け入れるとそれも愛嬌でした。
初めて膝に乗ってきたときはやっぱり凄く嬉しかったです。
受け入れられた気がして。
気持ちはちゃんと示さないといけませんね。
行動でも、言葉でも。
彼等に教わりました。
おしまい